問題の仏像は長崎県指定の有形文化財で対馬市の観音寺から盗まれた「観世音菩薩坐像」。韓国中部、瑞山にある浮石寺が、同像は14世紀に同寺で作られたと主張。長崎で盗まれた後韓国に密輸された像を発見、保管する韓国政府による移転禁止を求める仮処分申請を同地裁に行っていた。
同地裁は、観音寺がこの像を正当に取得したことが訴訟で確定するまで、韓国政府は日本政府に引き渡してはならないと判断した。」
この問題で,日本の法律的理解の範囲を超えていることは,
「観音寺がこの像を正当に取得したことが訴訟で確定するまで」という部分です。
元々の所有権を主張することは,かなり難しい理論がありますも,14世紀の事柄を主張し,それが裁判所が認めたという事態,しかも,盗難被害者が,韓国国内で裁判をして,所有権を確定させないとならないと所有権の立証を求められることは,まず日本国内では出されないと考えられます。
ちなみに,「文化財不法輸出入禁止条約」は,韓国も締結国ですが,
簡単にいえば,盗品の輸入を禁ずるものです。
今回も,盗品であることが明らかな事案ですので,輸入が禁止され,回復措置をとる国際法上の義務が韓国に生じます。そして,通常は,国際法が優先するのが,通常の法律的理解です。
法常識というのは,より国内に近い国の方がリスクが減ります。日本国内での一般的な法常識では,考えられない,理解を超える特殊性がある場合は,よりリスクが高まります。
今回の事案,かなり法律的理解を超えており,解説も困難といえます。一般には,日本の法律,法常識に近いといわれる韓国ですが(たとえば,民法は日本のほぼ引き写しである),実は,かなり特殊の法常識がある国であるといえます。これもカントリーリスクといえます。
2.2 サイバーテロの脆弱性!というよりは…(韓国)
2013年3月22日
「3万2000台のコンピューターが被害」――韓国サイバー攻撃の全貌
パッチ管理システムでウイルス配布、接続元は中国ISP
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/news/20130322/1084129/?P=1
「KISAによれば、ウイルスは「パッチ管理システム(Patch Management System)」を経由して、各企業のサーバーやパソコンに配布されたという。ここでのパッチ管理システムとは、パッチ(セキュリティ更新)をパソコンなどに自動的に配布するシステム(サーバー)のこと。米マイクロソフトが提供する「WSUS(Windows Server Update Services)」が有名。ただしKISAでは、パッチ管理システムの名前は明らかにしていない。」
企業が外国で企業活動するに,インフラの整備はとても重要な要素となるのは当たり前です。PC環境というものも重要なインフラの一つです。
Windowsの更新の際,マイクロソフト自身が,パッチを提供するのが普通です。パッチ管理システムが,WSUSが有名とありますが,アップデータの際には,普通は,WSUSを経由すれば足ります。
今回,
「KISAでは、パッチ管理システムの名前は明らかにしていない。」
と書かれています。Winのアップデート(今回は,これが行われた直後に発生したとされています)が,WSUS経由ならば,さっさと公表すれば,よい,悪いのは,マイクロソフトだ!ということになるはずですが,なぜか,明らかにしていない・・・。
また,正規アップデートで問題があれば,もちろんマイクロソフトが動くはずですが,その動きはまるでない。
ちなみに,いわゆる割れを使う場合は,当然ながら,別にWSUSのようなパッチ管理サーバーを用意する必要があります。マイクロソフトは,割れに正規パッチをあてると起動しなくなる対策を立てているとのことです。
割れを使い,かつ,正規とは別のパッチ管理サーバーが提供するソフトウエアに,ウィルスが混入していれば,今回と同様の事故が起きます。
割れは,著作権等知財に絡む問題点は,もちろんありますが,別に,正規ではないゆえのセキリティ上の危険をはらむということになります。
今回の事件,官庁とか銀行とか,大企業とかも被害にあっております。
まさか,そんなところで割れを使っているとは思われませんが・・・。
今回,当初北朝鮮のサイバーテロと言われています(ました)。
サイバーテロは,まず,サイバーテロが起きやすい土壌があるか,攻撃の的となりやすいかという点が重要です。ただ,これは,アメリカや日本のように経済的発展があれば,また,近くに好戦的な敵国があれば,それらに伴う一つのリスクともいえる問題です。
さらに,もう一つ重要な要素があります。
それが,仮にサイバーテロに接したときにおいても,それに耐えうる環境,土壌,施策,教育がされているかです。仮に,割れに緩い国だったとしても,企業対策としては,その土着的な環境に惑わされないことが必要になるといえます。
ちなみに,この記事,中華人民共和国IPアドレスとの一致から北朝鮮発と当初発表していますが,韓国国内と,後に訂正しています。
どうなっていくか,見守ろうとおもいます。珍しいです。
ちなみに,北朝鮮発ならば,現実に隣国等から攻撃を受ける可能性のある国となり,これも,考慮配慮すべきカントリーリスクとなります。
「韓国の司法は国家間で締結した条約や協定の重みを、どうとらえているのだろうか。 釜山高裁が三菱重工業に対し、戦時中に日本に強制徴用された韓国人への損害賠償の支払いを命じた。元徴用工が新日鉄住金を相手取って起こした訴訟でも、ソウル高裁が同様の判決を言い渡している。それに続くものだ。」
韓国でのビジネスにおいて,極めて重要な意味を持つ判決が韓国において続々出されています。
この記事でも懸念を示していますが,
「 今回はいずれも差し戻し控訴審だ。判決が覆ったのは、韓国の最高裁が昨年、日本企業に対する個人の賠償請求権は「消滅していない」との判断を示したためだ。
しかし、そもそも日韓両国は1965年の国交正常化の際に請求権・経済協力協定を結んでいる。日本政府は無償3億ドル、有償2億ドルの経済協力を実施し、それによって請求権問題は「完全かつ最終的」に解決されたはずである。
韓国政府も元徴用工の賠償について、対日請求権は認められないとの認識を共有してきた。韓国の司法の判断は極めて遺憾で、不当な判決としか言いようがない。
国家間で解決済みの問題について、日本の個別企業の責任が問われるようでは、「安心して韓国とビジネスができない」という声が上がりかねない。」
日本が韓国に対して「完全かつ最終的」な解決を前提に,多大な経済的協力をしたことは,実は,韓国国民にあまり知られていない。元々,韓国国内で,日韓基本条約,それに伴う経済協定の中身が公開されたのは極めて最近のことです。
日本は,100年以上続く企業が,2万社を超える極めて珍しい国です。解決されたはずの問題を蒸し返されれば,極めて重大なカントリーリスクとなります。
日経記事がいうように,政府が考えるという政治的問題は,はっきりいえば,ビジネスの速度にはついていけません。政治的には,国際司法裁判所の結果待ち,結果が出ても,韓国がそれに従うという確実な予測もつかない。
記事は,単に懸念を示していますが,新規進出は,もちろん,撤退への大きな要素となります。
後に追記