H270328記載
今回は、少し視点を変えて、
中小企業のための知的財産戦略(7):人的情報管理と物的情報管理
を書いてみます。
7 中小企業のための知的財産戦略(7):人的情報管理と物的情報管理
7.1 情報管理の重要性
特許・実用新案、の基礎となる技術的な問題は、ノウハウ・著作権、さらに不正競争防止法が問題となる「秘密情報」についても、情報管理が重要となります。また、情報漏洩問題も、結局は情報管理の問題です。
情報管理は、
・「人的」情報管理の問題と、
・「物的」情報管理の問題と
に分けることができます。情報管理がずさんであれば、得られるべき権利を得られず、あるべき権利を失い、重大な損失を被ることがあります。
7.2 「人的」情報管理
7.2.1 「人的」情報管理の国内問題:「入社時」における秘密保持契約の重要性
「人的」情報管理の国外問題は、国外問題でも問題となる(産業)スパイの問題は、もちろんあります。これについては、国外問題で問題点を書くことにして、国内問題としては、企業側の対応としての問題でもある、情報管理の問題を取り上げます。
「人的」というのは、「情報に接する人の選別」の問題です。重要な情報であれば、接するべき人は限られるはずである、限られないというのは、重要な情報ではない、そうでなくても、秘密とされる情報ではない。
大雑把にいえば、そう考えるのが、裁判所です。
たとえば、よく問題となる「顧客名簿」ですが、企業にとってみれば、重要な情報であることは間違いありません。しかし、顧客名簿は、利用してナンボともいえます。社長だけなど限られた人物だけが、持っているよりも、営業に活用、管理に活用、経営戦略として活用などなど、実は、情報に接する人物を限らないほうが有用という性質をもちます。このような類型の情報は、接する人を元々限るというのではなく、入社の時に、秘密保持契約を締結する、途中で情報流出がないような情報の管理が重要となります。
技術的な情報は、社員といえども、接するべき人員を制限すべきです。とはいえ、中小企業では、そもそも、あまり人がいない場合もあります。やはり、これも、入社時における秘密保持契約が重要となります。
ここでのポイントは、「入社時」です。
途中経過であれば、秘密保持契約を求めても、やはり辞めたということになれば、あとから取るということができない性質のものです。
秘密保持契約を締結しない社員は、
重要な情報へ接しさせない。
と結論的にはなるでしょうか。
7.2.2 「人的」情報管理の国外問題:主として(産業)「スパイ」の問題を軽く
「人的」情報管理の国外問題は、ありふれた言葉でいえば、(産業)「スパイ」活動の問題です。日本は、知的財産の制度・意識共、先進国といえますが、周囲の国家には、そのような意識が極めて薄い国もあります。あえていう国名をあげる必要はありませんが、流入する人口も多ければ、代わりに、被害数も多く、被害に直面しやすいといえます。この問題は、国外で活動するだけの問題ではありません。それゆえに、国内問題でも大きな問題となりつつあります。
産業スパイの問題は、もちろん外国人に限りませんが、当たり前ですが、外国人には、逃げ場があります。また、いい面でもありますが、自立意識も強く、その企業の工場長、ひいては取締役よりの魅力よりも本国での大規模な経営を望む、そんな側面が被害を大きくする原因です。逃げられてしまえば、つかまえようがない。また、国外で大規模にされれば、進出もできない。ヘタしたら国外で特許・実用新案・商標等をとられてしまう。仮に、国外で補足できたとしても、元やウォンなどでもらっても仕方がない・・・不利益な点はかなりあります。
日本では、安全保障上の本来の「スパイ」活動防止も不十分な上、いわゆる「産業スパイ」に対する法律的な手当は、全くの不十分です。不正競争防止法の改正議論をふまえても、まったく話にならないレベルといえます。
法律の保護が薄いという認識を十分に持ち、労務管理も含めて慎重な判断をする必要があります。個人的な好意を柱にして会社を危うくすることは最悪です。冷徹な側面も経営者にとって必要なこともある、そんな場面といえます。
7.3 「物的」情報管理
「物的」情報管理は、そもそも重要な情報としての取り扱いをしているかという問題です。接する情報は、人の問題ですが、これは、情報の純粋な管理の問題です。
パスワードやログインIDによる管理が、そもそもない、
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パスワードやログインIDが、全社員共通で誰もが知っている。
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パスワードやログインIDで一応管理はしているが、たとえば、辞めた人について何も対処していない。
などなど、細かくみると、パスワードやログインIDで管理している!というだけでも、かなり段階があります。不正競争防止法の「秘密管理性」は、最初は、サーバー室を用意しているとか、物理的・経済的な条件が厳しくかったといえますが、今日のitの発展により、やろうとおもえば、できるということが多くなっています。
単に形式的にパスワードやIDを付与しているということで満足せずに、重要な情報の度合いに応じて、メリハリをつけて、これで裁判所に主張できるものかという細やかな配慮が必要となります。ここまで来るとどちらかというと法的問題もからむ弁護士助言業務にもあたるかもしれません。
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