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Channel: 弁護士,弁理士うつぼいわ の活動日誌
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知財、パブリシティ:あまり知られていないので、まずは基本的知識を(一般向け)

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割りとよくある相談事例となっています。今回は、パブリシティ(権)について、まずは、基本的知識を書きます。

1 「パブリシティ」(権)とは?

「パブリシティ」権とは、

「氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利」

と一般的にいわれます。
裁判例もありますが、裁判例としては、人格権に基づくものとされています。パブリシティ権という名称の権利そのものが法定されているものではなく、名誉権などの人格権とされ、それを離れて独立したパブリシティ権があるとされているものではありません。人格権と呼び名が違うという言い方でしょうか。

2 著名人と一般人との違い
パブリシティ(権)は、名称等を使用されることによって生じる経済的利益が侵害されたか否かという側面からみたものです。

その名称等を使用することで、なんらかの経済的利益を産む名称等でなければなりません。

そうなれば、当然、著名人と一般人とは扱いが異なります。一般人の名称等を使ってもお金になりませんので。


3 物のパブリシティ(権)
いわゆる、物についてパブリシティ権が発生するかという問題があります。

これには最高裁判例があります。

最二小平成16年2月13日判決(平13(受)866、民集第58巻2号311頁)

です。

結論的には、物のパブリシティ(権)を否定した裁判例として有名ですが、かなりきちんと書かれていますので、それに即して書きます。


1審原告らは,本件各競走馬を所有し,又は所有していた者であるが,競走馬等の物の所有権は,その物の有体物としての面に対する排他的支配権能であるにとどまり,その物の名称等の無体物としての面を直接排他的に支配する権能に及ぶものではないから,第三者が,競走馬の有体物としての面に対する所有者の排他的支配権能を侵すことなく,競走馬の名称等が有する顧客吸引力などの競走馬の無体物としての面における経済的価値を利用したとしても,その利用行為は,競走馬の所有権を侵害するものではないと解すべきである(最高裁昭和58年(オ)第171号同59年1月20日第二小法廷判決・民集38巻1号1頁参照)。本件においては,前記事実関係によれば,1審被告は,本件各ゲームソフトを製作,販売したにとどまり,本件各競走馬の有体物としての面に対する1審原告らの所有権に基づく排他的支配権能を侵したものではないことは明らかであるから,1審被告の上記製作,販売行為は,1審原告らの本件各競走馬に対する所有権を侵害するものではないというべきである。

もともとパブリシティ権は、所有権に基づくものでそれ自体独立した権利ではないことをはっきり述べたものです。所有権の本質をも書いてあり、理論的にはかなり意味深きことを書いています。

現行法上,物の名称の使用など,物の無体物としての面の利用に関しては,商標法,著作権法,不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律が,一定の範囲の者に対し,一定の要件の下に排他的な使用権を付与し,その権利の保護を図っているが,その反面として,その使用権の付与が国民の経済活動や文化的活動の自由を過度に制約することのないようにするため,各法律は,それぞれの知的財産権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,その排他的な使用権の及ぶ範囲,限界を明確にしている。

実は、かなり重要なことを書いています。特に排他的な使用、いいかれば、独占して他に使わせないことができるような権利、または、他に使われた場合に差止めができるような権利は、法律等の要件が必要となるといっています。物のパブリシティ権には、そのような根拠がない旨いっています。

上記各法律の趣旨,目的にかんがみると,競走馬の名称等が顧客吸引力を有するとしても,物の無体物としての面の利用の一態様である競走馬の名称等の使用につき,法令等の根拠もなく競走馬の所有者に対し排他的な使用権等を認めることは相当ではなく,また,競走馬の名称等の無断利用行為に関する不法行為の成否については,違法とされる行為の範囲,態様等が法令等により明確になっているとはいえない現時点において,これを肯定することはできないものというべきである。したがって,本件において,差止め又は不法行為の成立を肯定することはできない。


物のパブリシティ権を否定した裁判例として知られています。差止めも不法行為の成立(損害賠償請求)も駄目ということになります。


4 では、どうすれば?

では、どうすればいいんだ?という答えも、裁判例にあります。

簡単にいえば、独占権が欲しければ、商標権を登録したり、不正競争防止法や著作権の要件を備えるようにしろ!

ということです。

特に重要なのが、登録権利としての商標です。商標を登録していないのに、損害賠償や差止めは、かなり難しい、そんな意味もあります。

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